弁護士を利用する依頼者の方から、「解決までに掛かる時間」についてのご質問を頂くことがとても多いので、ここでは、弁護士が法的措置を取る際に掛かる時間についてご説明しようかと思います。
法律相談や弁護士の受任時に、時間の誤差が生じうることを前提に、「受任頻度の高い過去の事案ごとに、あくまでも最短で解決できる場合を想定して」掛かる時間はお伝えできるものの、事件処理に必要な期間は事案の内容や相手方(相手方の弁護士の場合も含め)の反応や対応によっても変わってきたりします。
「○○事件」と一言で言えば、一見同じような事件や事案に見えても、実際、内容差が大きいため、期間の見通しをお伝えするのはとても困難で、一概にこうだとは言い切れないものなのです。率直に言えば、弁護士に依頼すると、最善の策をとり納得のいく解決はできても、時間はかかります。
弁護士が扱う案件は、究極に言えばトラブル解決です。そして、その各事件の事案内容というのは本当に千差万別です。それを過去の事例の型にはめて、誰の問題にも同じように当てはめるようとするのは なかなか難しいというのが実情です。
理由は他にもいくつもありますが、例えば、一回の交渉のやり取りは下記の様になります。
【交渉においての一連の流れと時間】
- 「依頼者の相談(希望)を聞く」
- 「事実(証拠)確認」
- 「法的措置内容を検討する」
- 「依頼者へ伝える(打ち合わせ)」
- 「書面作成」
- 「相手(弁護士に伝える)」
- 「相手の見解(相手の弁護士が相手と打ち合わせる」
- 「相手の事実証を待つ(相手弁護士の事実確認)」
- 「相手の証拠提示(相手弁護士の書面作成)」
- 「相手の反論(相手の弁護士から連絡)」
- 「依頼者に報告」
※ 交渉で示談や和解が得られなければ、上記のいくつかの項目を何度となく行ったり来たりすることになります。
「事実(証拠)確認」の間は依頼者から証拠を取得し、確認して不足があれば、更に依頼者へお願いして提出していただいたり、また、それを詰めて纏める作業が必要になります。金銭が絡む場合は、利息の計算を求めて最終請求金額を決めたりする時間がかかります。
これを間違いがないようにチェックして、それを何度か繰り返すことになるので、尚更時間が掛かり、相手と最初の交渉に及んでから相手からの回答を待ち、依頼者への報告まで最短でも1週間から1か月くらいは普通に時間が掛かります。
また、相手からの反応や回答が得られるまでの待ち時間に左右されたり、更に第三者機関からの書類取り寄せが必要な場合などは、その第三者機関の時間都合にも影響されます。その他、依頼者の方と私どもの打ち合わせや報告、また、相手の弁護士と相手の打ち合わせの時間、事件に関わるそれぞれの人たち全員の日程などが合わなければ、その分時間が掛かることになります。
そして、裁判所の場合は、制度の問題も絡むのでもっと時間が掛かります。
【裁判においての一連の流れと時間】
- 「依頼者の相談(希望)を聞く」
- 「事実(証拠)確認」
- 「法的措置内容を検討する」
- 「依頼者へ伝える(打ち合わせ)」
- 「書面作成」
- 「依頼者に書面(起訴内容)確認」
- 「再検討や証拠の再収集(証拠や書面の不足があれば勝訴の可能性が下がる)」
- 「裁判所に提出」
- 「裁判所からの指示があれば、提出書面や訴状の一定の修正」
- 「裁判日時の打ち合わせ」
- 「裁判初日(殆どの裁判は1回、2回では終わらない)」
- 「相手側の反論(相手方も同様の手続き)」
※ 相手の出方や裁判の流れによって、追加書面(証拠)の提出等で、上記のいくつかの項目を行ったり来たりすることになります。
このような手順を踏むため、裁判だと交渉よりずっと時間が掛かるのです。こちらの最初の言い分を裁判で言うまでに、1か月半から2か月半。そこから、相手の反論も同程度の時間が掛かります。
タイも日本も同じですが、裁判の期日というのは、通常、約1ヶ月に1回程しか入らないのがタイの裁判所標準です。裁判所で受け付けている事件は数千件、裁判官は一人で何百件もの事件を担当し、多くの事件を抱えて手一杯です。ですので、おおよそ約1ヶ月に1回というのが実情なのです。
私ども弁護士は、早急な事件解決を心がけてはいるのですが、どうしても、上記の様な状況や事情から時間が掛かります。日本からの依頼者の対応となると、証拠のEMS等の国際郵送などのやり取りが必要になるので更に時間が掛かってしまいます。
弁護士の仕事には、そうした異なる第三者機関や相手(相手の弁護士)への橋渡しや、伝達みたいな業務も含まれています。ですから、 ある程度の時間は掛かってしまうものなのですが、それもすべて、それぞれの依頼者のトラブルを丁寧にかつ慎重で確実に解決する為なのです。