強制執行(財産差し押さえ)

 

~目次(表示)~

 

◆ 強制執行とは何ですか?

 

強制執行申し立てから差し押さえまで

◆ 強制執行のステップ

◆ 強制執行を回避する方法

◆ まとめ

 

 

◆ 強制執行とは何ですか?


強制執行とは、債務者との間において裁判で和解や勝訴判決を獲得したにも関わらず、債務者が支払いをしてくれない場合に、法的機関(裁判所)が、債務者から強制的に滞納分の取り立てを行うことを言います。

 

債権執行は、債務者が返済を滞納し続けたときに、裁判所が強制的に債務者の財産を回収し滞納分の返済に充当することを決定する手続きで、一般的には、『差し押さえ』とも言われています。具体的には、債務者が所有している債権(給与や銀行預金、不動産など)を差し押さえて滞納分の返済に充てます。

 

債権者は強制執行を行う前に、金銭等の支払いを請求できる正当な権利の存在を証明して、その権利を強制的に実行する為に、裁判所からの許可「債務名義」の取得を必要とします。その為、民事裁判所へ訴訟を提起して裁判官より確定判決(債務名義)を得る手続きを踏む必要があります。

 

この様に、強制執行で債務者の財産が回収されるまでには、法律に従って段階を追って進める必要があります。ここでは、確定判決(債務名義)を得た後の強制執行手続きについて、どのような流れで行われるのかを詳しく解説していきます。

 

 

 

強制執行申し立てから差し押さえまで

◆ 強制執行のステップ

ステップ① 裁判所へ債権執行の申立てを行う

債権執行を行う際には、裁判所に「確定判決」に対して執行文の付与・債権執行の申立てを行い、仮執行宣言付支払督促の決定を得ます。

 

裁判所へ申立手数料を添えて執行申立書を提出します。不動産の差し押さえであれば、土地局での手続きをして全部事項証明書の入手や目的不動産の各図面を添えます。また、申立書添付の請求債権等目録の写し、債権者の資格証明書や依頼者からの委任状と作成した意見書などの様々な書類を揃えて債権執行の申し立てを行います。

 

 

ステップ② 財産調査を行う

強制執行手続きの為の債務者の銀行預金口座や自動車やオートバイ、不動産(土地建物)などの資産を調査して裁判所へ資産報告をします。※土地建物を所有していた場合には、土地局へ出向いて申立てに必要な書類を集めるだけでなく、現地調査を行いそのレポートを添えて地方裁判所に競売の申し立てを行います。

 

 

ステップ③ 債権差押命令が発令される

裁判所が債権執行の申立内容を精査し、債務者に対して「債権差押命令」が発令されます。発令後は債務者と債権者の双方へ「差押命令正本」と「送達通知書」が送付されます。申し立てを行って差し押さえが決定してしまうと、不動産の場合では、その時点で債務者に処分する権限がなくなるため、債務を一括で返済する以外には、差し押さえを回避できる機会がありません。

 

※この段階に入ってから、債務者が自身の債権(財産)を隠蔽する動きが確認できた場合には、債権者は債務者に対し「財産隠ぺい罪」として、別途 刑事請求(刑事裁判所へ提起)が別途 可能です。

 

 

ステップ④ 取立する権利が発生

債務者が、債権差押命令正本を受け取ってから、債権者は一定期間の経過を待って「第三債務者に対する取立権」を持つことが可能になります。

 

 

「第三債務者」とは

債務者に対して「債務」を負う者であり、債務者が「債権」を有している相手のことを言います。 第三債務者と差し押さえの対象になる債権は、債権者から直接取り立てを行うことが多く、例えば、債務者が銀行に「預金」を有している場合には、その預金額を有している銀行、債務者が給与賃金や賞与などを得ている場合は、その勤務先の銀行口座を有する金融機関が第三債務者となります。その他、債務者が所有している不動産の入居者の賃料(家賃収入)もそれに当たります。

 

 

差し押さえが禁止されている財産

 

下記の財産は差し押さえが禁止されています。

 

20,000バーツ未満の現金(給与など)や生活に欠かせない生活用品、生活するのに必要な最低限の食料や燃料、仕事に必要なパソコンなども差し押さえが禁止されており、その他、宗教に纏わる仏像や位牌など礼拝や祭祀に必要なものも差し押さえ不可に当たります。

 

 

ステップ⑤ 強制執行と第三債務者への取り立て

債権者の不動産や預金などを差し押さえして、競売にかけるなどの方法で現金へ替えて債権を回収していきます。

 

強制執行で不動産執行(差し押さえ)が開始されると、裁判所の調査や不動産の評価人により、差し押さえ対象の不動産登記簿の閲覧や物件の立会調査が行われます。不動産に対して適正な売却基準価額を決めたうえで不動産の売却を実施します。そして、競売にかけられて落札者に不動産が引き渡され、その配当金を債権者が受け取るという流れで手続きが進みます。

 

また、債権者が「取立権」を得た後で、給与債権などの財産になるものを差し押さえる場合には、先述した通り、第三債務者に対して取り立てを行えるようになります。

 

例えば、給料が差し押さの対象になっていた場合には、直接債務者の勤務先から、債務者に支払われるべき給料を回収し未払いの借金返済に充当できます。但し、給与の差し押さえができるのは、20,000バーツを超えた部分の額のみとなります。仮に、債務者の労働賃金が毎月 50,000バーツであるなら、30,000バーツを差し押さえることができます。

 

 

◆ 強制執行を回避する方法


強制執行で債務者の財産が回収されるまでには、上記のように段階を踏む必要がありますので、借りた金の返済が滞っているから直ぐに強制執行が行われるというわけではありません。借金の返済にお悩みの方や支払いを滞納してしまっている方は、債権者が債権執行の申立てを行ってしまうと強制執行を回避するのは難しくなってしまいますので、債務整理の検討や強制執行への対策のために何をすればいいか、早期の段階で弁護士に相談しておく方が良いでしょう。また、訴訟となった場合には、借金を返金しない債務者が勝訴することはないと考えてよいでしょう。

 

 

返済する

 

債権者はいきなり裁判所に訴訟を起こすわけではなく、まずは債務者に対して、督促状や催告書を送って警告するケースが一般的です。弁護士への相談のタイミングとしては、「借金の返済が難しくなってきた」と感じた段階や、この督促状や催告書が自宅や職場に届いた段階なら、まだ、債権者は訴訟の提起を行う前の段階ですので、交渉の余地がある状況だと言えます。その段階で弁護士に談するのが良いでしょう。

 

勤務先からの給与や賞与が強制執行の対象になると、借金を返済していないことが職場の人々に知られてしまうので、職場に督促が届くことや毎月の給与の差し押さえを回避したいのであれば、借金を返済することです。長い間、支払いが滞っている状態が続いているのであれば、裁判所に申立てをされて、差し押さえが執行される可能性がありますので、根本的に解決するのであれば借金を返済する他ありません。

 

交渉する

 

債権者が、裁判所に申し立てを行う前であれば、強制執行の手続きを待ってもらえるように債権者に交渉をもちかける選択肢もあります。債権者と交渉する際には、「一部だけ(少しだけ)でも一旦返済する」ことや「今後、返済をしていく意思がある」こと、支払い期日を再提示したうえで「待ってもらいたい」ことなど、情報を準備しておくと交渉が成り立ちやすく、可能な支払いプランに変更してもらうこともできるでしょう。

 

債権者側も強制執行の申立てをする際は、それなりの費用がかかるので、もし、上記の様な話し合いで、債権者との間で解決が可能であれば、交渉で再決定した支払期日まで強制執行をしないで待って貰える可能性があります。

 

 

 

◆ まとめ


債権者の場合には、自力で債務者から回収しようとしても、そう簡単にいくとは限りません。債権回収をなるべく早期段階で確実に成功させるためには、弁護士(専門家)の力を借りる方が有効的でしょう。

 

専門家を代理人にすることによって、自分自身の精神的な負担が軽減することは、何よりものメリットでしょう。また、自力では確認不可能な財産の特定が可能になること、弁護士が登場することで、債務者に本気で回収しようとしていることが伝わり、相手への心理的プレッシャーや「返済に対する意識」を高めることができるのは大きなメリットとして挙げられます。

 

債務者である場合には、強制執行が行われると、裁判所が強制的に債務者の財産を回収できるようになります。財産の差し押さえが決定されてしまうとできる対処法が限られてくるので、債権者から督促状や催告書が届いた段階や借金の自力返済が難しくなってきたタイミングで弁護士に相談するのが良いでしょう。

 

当事務所では、「貸した金」「借りた金」の問題に関する相談をお受けしています。「お金を返してもらえない」、また、「お金返せなくて悩んでいる」際は、是非、タイ在住支援法律事務所へご相談ください。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

 

 


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