死後に遺産相続で揉めないように

 

タイで生涯を終える日本人や日本で暮らしながらもタイに不動産や預金などの財産を所有している場合、その亡くなられた方の遺産はいったいどうなるのか?


日本に家族を残し、タイで長年暮らしている日本人男性 A氏(60歳)は、タイ人女性と仲良くなり、結婚はしないものの25年以上ずっと一緒に生活をしていました。また、日本にいる奥さんとはタイに来る前から10年以上別居状態で、別居のままタイに来て働いていました。結局、35年以上日本人の奥さんとは別居状態になります。


この男性はある日、会社からの帰り道で自動車事故に遭遇し、突然死亡してしまったのです。

この男性は日本の持ち家を含めて相当な財産がありました。またタイにも相当な預金がありました。
また、生命保険も日本で掛けており、受取人は日本にいる長男(35歳)となっています。

さて、一緒に暮らしていたタイ人女性は、この生命保険のことは生前この男性から聞いており、
「いずれ、受取人を君に変更するから」と口約束をしていたと、タイ人女性は弁護士に相談を持ち掛けました。日本人男性はこのタイ人女性は婚姻届けにサインはしたものの、「日本にいる別居している奥さんと正式に離婚するまで待って欲しい」と女性に言ったまま、ずっとそのまま保留にされていました。

女性は口約束であっても、長年一緒に暮らしていた事実があり、また婚姻届けは出していないものの、男性が直筆でサインしたものなのだから、「事実婚」として認めるべきと主張。さらに、以前に子供も妊娠して下ろした事実がありました。その時の病院の領収書まで保管していたので、これも事実婚としての証拠と重ねて主張する始末です。

 

おまけに、日本で別居中の奥さんとは、日本人男性 A氏が25歳の時に第一子の息子が生まれてから間もなく別居した為に、一緒に生活した実績がほとんどなく、逆にこのタイ人女性とは25年以上の同居の実績があります。


果たして、仮にタイ側で「事実婚」として認められた場合、保険金を受け取る権利は多少でもあるのだろうか。また、別居期間が35年近くある配偶者とは夫婦としての権利があるのだろうか。もっとも、男性の長男は現在どこにいるか所在は分からず、この保険金の行方はいったいどうなってしまうのだろうか。
日本にいる長男は父親が死亡したことも知らされず、そもそも日本の保険会社はタイの日本大使館などから連絡を受けても、いったいどのように処理をするのであろうか…。

 

 

【法解説】

タイで死亡した場合、日本大使館で死亡届けが必要です。死亡届けが行なわれたあと、その書類が本籍地の市町村に送付され(2週間から1ケ月要)、外務省ルートで日本に住む遺族に伝えられるのが一般的です。

 

まず、上記の例のタイ人女性ですが、タイの法律では残念ながら、事実婚では遺産相続人にはなれません。よって、35年も別居をしていた日本の本妻と行方不明の息子に相続権があります。

 

しかし、遺産相続のときタイか日本のどちらか、また両国に同じ遺言内容が保管されており、その法的効力が認められている場合は原則的に遺言書通りに遺産分割が行われますので相続人の同意は必要ありません。

 

上記の例では、日本人の息子が行方不明でしたが、基本的に日本での遺産分割協議は相続者全員の合意がないと行えませんが、相続人に音信不通の人や行方不明者がいる場合でも、裁判所へ申立てを行い遺産分割協議をそのまま進めることが可能です。

 

また、タイで遺産を受け取る相続人も同様に裁判所へ申立てが必要となります。遺言書がある場合は、遺言執行者によりタイの裁判所へ申し立てを行い、遺言執行をしていきます。相続財産の管理や移転登記、預貯金の解約・払戻、相続財産目録の作成などが必要となります。

 

 

【タイでの遺産整理・遺言執行・遺言書作成承ります】

海を越えるタイと日本、また、国籍の違う日本人とタイ人との間での遺産相続は、時に残された家族に問題を齎します。生前、遺言書において遺言内容の具体例を明示し明確化しておくことをお勧めします。